2025年7月5日現在の地震活動の状況と今後の可能性についてお知らせします。
この情報は地震を予知することを目的として出している情報ではありません(地震の予測と予知の違いについてはこちらを参照)。また、出している情報以外の領域でも大地震が発生する可能性があることを前提に参照して下さい。
最新の地震活動の状態
既に話題になっているためご存知かと思いますが、トカラ列島近海では通常の活動とは異なる異常な群発地震が発生しています(詳細は以下解説)。
千島海溝沿いにおける地震活動の活発化は、このまま大地震に発展するか、それともいつも通りに収束に向かうか、様子見としています。
余談ですが、7月初めころに新潟県上越地方で異常な数の地震を検出していますが、現在は収束しているため、評価していません。ただ、特に能登半島以降に異常な活発化が見られる時期が見られるため、危険度は長期的には高くなっています。
北海道沖(千島海溝の領域) | ※少し規模の大きな地震が増加していたため、危険視される領域でもあるため、しばらく様子見。 |
秋田県内陸南部 | やや上昇傾向 |
宮城県・福島県沖の領域 | 宮城県沖は横ばい状態、福島県沖は減少傾向(中・長期的) |
岩手県南部(宮城県寄り) | 活発化した状態で、やや上昇傾向(長期的) |
福島県会津(群馬県寄り) | 特に異常はないが、活発化した状態(長期的) |
神奈川県の領域 | 特に異常はないが、平常時よりは活発化している状態(長期的) |
伊豆大島近海 | 減少傾向 |
石川県西方沖及び能登半島地震の震源域 | 能登半島地震の影響もあり、活発化状態(長期的) |
兵庫県南西部 | 上昇傾向(中・長期的) |
島根県東部 | 上昇傾向 |
山口県北部 | 異常な活発化は、ほぼ収束傾向 |
宮崎県南部山沿い | 平常時よりも活発化状態 |
日向灘 | 特に異常はないが、長期的に活発期にとなっている |
トカラ列島近海 | ※異常な活発化状態となっていて、当面の間は要警戒 |
地図
地震活動の状態を、色別に分けたものです。
- 紫色は、要警戒(現在異常な状態となっている領域)
- 赤色は、警戒
- 黄色は、注意
北海道・青森付近

5月下旬あたりから中規模程度以上の地震が相次いで発生したため、しばらくの間警戒度を引き上げています。現在は、地震活動は減少傾向ですが、活発化からある程度の静穏状態となってから発生することもあるため、注意が必要です。
詳しくはこちら記事をご覧ください。
東北地方

特に異常と言える領域はありませんが、中長期的には注意が必要です。
関東地方

伊豆大島近海で地震活動は減少傾向です。
因みにこの付近には「大室ダシ」という海底火山が存在していて、約7000~1万年前に噴火を起こしています。地震の原因は普通の地震由来、またはマグマなどの流体による地震由来の可能性があり、特定はできませんが、噴火を起こす可能性のある火山であることは理解しておく必要があります。
茨城県北部の領域では長期的に活発化状態となっています。また、長期的には神奈川県の領域でも活発化している状態を確認しました。
北陸地方

新潟県上越地方で異常な数の地震を検出していますが、現在は収束しています。
近畿・中国・四国地方

山口県北部の領域では、暫く異常な活発化状態が続いていましたが、現在は収束傾向となっています。
島根県東部付近で地震活動の活発化を確認しました。
九州地方

熊本地震以降、日奈久断層帯を中心に活発化していて、特に割れ残りとなっているエリアで長期的には活発化している状態となっています。
他にも日向灘の領域で、去年にM7.1の大地震、今年の1月にもM6.6の地震が発生していて、本格的に長期的な活動期に入ったと推定されます。今後、しばらくの間は長期的な意味で大地震が発生する可能性があるので注意です。
奄美・沖縄地方

トカラ列島近海では異常な群発地震が発生していて、明らかに通常とは異なる活動となっています。そのため、警戒度を最大レベルに引き上げています。以下で詳細解説
トカラ列島近海での地震活動について

トカラ列島近海では元々群発地震が多く発生する領域なのですが、今回は特別異常な状態となっていて、収束の見通しは立たない状態です。
元々この領域は「トカラギャップ」と呼ばれる窪地が存在し、そこにある断層で地震が発生しています。南東方向には琉球海溝が存在し、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界が存在していて、さらに地震活動が活発化している北西側には「沖縄トラフ」と呼ばれる海盆が存在しています。「沖縄トラフ」は、琉球海溝におけるプレート沈み込み運動に関連して地殻が伸張・沈降、つまり「リフティング」によって形成された背弧海盆となっていて、トカラ列島ではその影響をもろに受ける複雑な領域となっています。
特に「活動域A」はメカニズム的にも一致することから、この地震はそれに起因して発生したと考えることもできます。ただ、「活動域B」に関しては少しメカニズムが異なっていて、「活動域A」の後に発生したことも考慮すると、地震によって生じた新たな別の力がかかったことで発生したものともとらえることができます。
この地震の根本は、マグマなどの何らかの流体が原因と思われますが、この領域は歴史が浅く、未知数な点が多く、記述した通り複雑な構造にもなっているため、詳しい調査や研究を進めなければ分からない領域です。
トカラ列島の地震活動は、無感地震も含めると概ね1日200~300回程度の地震が発生するなどこれまでとは異なる地震活動となっています。地震そのものによる「津波の心配はない」ですが、何しろ海底で群発地震が発生していますから、海底地滑りによる津波が発生する可能性や火山が多く分布している領域でもありますから、今後火山活動に影響を与える可能性も否定はできません。
何せよ今後の活動に警戒が必要です。